2022年になってから、為替相場が大幅に変動し、20年ぶりの「円安」は
ウクライナ情勢などもあり物価の上昇も招いています。
また、日本の円預金金利は、もう何年も低いままで利息もあまり付かず
ほとんどお金が増えないので、外貨預金をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
また、円安に伴い円で引き出し等を検討される方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、「為替差益」の取扱いを取り上げていきます。
1.「為替差益」とは
為替差益とは、「外貨建債権・債務などを保有しているときに為替相場の変動により、
自国通貨に換算した債権・債務額が増減することによって発生する差益」の事をいいます。
たとえば、「1米ドル=100円」のときに円を米ドルに替えて外貨預金に預け入れ、
「1米ドル=110円」のときに円に戻して引き出すと、お金が1米ドルあたり10円増えます。
このように、為替レートの変動で増えたお金を為替差益といいます。
2.外貨預金の為替差益
外貨預金で発生した為替差益には、所得税と住民税がかかります。
「為替差益」は、所得税・住民税ともに「雑所得」として取り扱われます。
外貨預金の為替差益を確定申告しなければならないケースは以下の通りとなります。
A.外貨預金の外貨を日本円にしたとき
外貨預金で運用している米ドルやユーロを売却して日本円にした場合、為替差損益が
確定します。(売却時外貨額ー購入時外貨額がプラスの時に為替差益が発生します)
ただし、いったん売却して日本円にしても、その後すぐに同じ通貨を購入したときは
含み損益として取り扱われ、為替差損益が確定したことにはなりません。
B.外貨を他の外貨に換えたとき
「米ドルでユーロを買った」など、保有していた外貨を他の外貨に換えたときも
為替差損益が確定します。これは、所有している米ドルを日本円に換えて、
そのお金で米ドルを買ったと考えるためです。
C.外貨でモノやサービスを購入したとき
保有している外貨で外貨建ての商品やサービスを購入したときも為替差損益が
確定します。これも、上記B.と同様に所有している米ドルを日本円に換えて、
そのお金でモノやサービスを買ったと考えるためです。
3.確定申告をしなくてもよいケース
為替差益が確定した場合、原則として確定申告が必要となります。
ただし、次のいずれかに該当する場合は、確定申告は不要となります。
A.給与所得者や年金生活者で他の所得合計が20万円以下
ただし、為替差益の雑所得も含め、給与所得と退職所得以外の年間所得の合計が
20万円以下のときです。もし、他に独立して副業をしているなら、それも含めて
所得金額が20万円以下かどうかを確認します。
ただし、確定申告が不要となるのは所得税だけで、住民税の申告は必要となります。
B.学生や主婦など特に収入のない人の外貨の利益が48万円以下
確定申告の基礎控除額は、48万円です。基本的に所得金額が48万円を
超えていなければ、所得金額はゼロとなり、確定申告は不要です。
なお、確定申告をする際の注意点として、
A.医療費控除などで確定申告をする場合は、為替差益も含めて
すべて申告しなければなりません。
B.扶養している家族がいる場合、配偶者控除や扶養控除がなくなる場合もある。
ので、注意しましょう。
【参考】確定申告が必要な方(国税庁)
円安が進み含み益が気になるところですが、申告や納税、その他の行政サービスにも
影響が出る可能性がありますので、状況を考慮しながらタイミングを見計らって
利益を確定するようにしましょう。
(担当:馬場)