さて、「資金計画を作る」後編です。前編は、
・資金計画を作る前提として利益計画を作る
・利益計画は未来の損益計算書(目標)
・損益計算書も利益計画もお金の動きと一致しない「会計のルール」で作られる
・利益計画とお金の動きの2つの動きのズレを知る
・ズレ1:時間差によるズレ
・ズレ2:損益計算に影響しないお金の動きがある
という話をさせていただきました。
これを踏まえて、今回は起業初年度の利益計画を元にした資金計画を作ってみたいと思います。
資金計画を作ってみる
売上高 12,000(月1,000)
売上原価 ▲7,200(月 600)
販管費 ▲4,000
目標利益 800
・資金に関すること
開業資金 300 ※会社で言えば資本金
売上代金回収、仕入代金支払いについてはそれぞれ1か月サイトとする。
在庫については仕入れの1か月分とする。
金融機関からの借入はしない。
事務所兼倉庫を借りるために保証金100が必要。
上記の利益計画を元に資金計画を作っていきましょう。
資金計画を作る上ではお金の動きを「固定資金」「運転資金」と分けて考えます。
「固定」とか「運転」とかが“?”な感じだと思いますが、
下記のように捉えていただければと思います。
固定資金・・・会社の取引(販売、仕入れ等)が全て現金取引で行われた場合のお金の増減
運転資金・・・利益計画が現金取引では無い場合の「時間のズレ」によるお金の増減
最初に固定資金の増減をみていきます。
■固定資金の増加要因
300の開業資金を元手に、利益計画を達成できた場合には800の資金が増加しますので、ここでいったん1,100の資金(①)がある事になります。
■固定資金の減少要因
次に、固定資金の減少要因について計画していきます。
ここでは、事務所兼倉庫を借りるための保証金100の支払いが、
固定資金の減少要因として入ってきます。
他には今回は入る項目がありませんので、固定資金の減少要因合計が100(②)となります。
■固定資金余裕を計算する
固定資金増加計 1,100(①)から固定資金減少計 100(②)を差し引いたものを、
「固定資金余裕」と言い、これが今回1,000となります。
これが何かと言うと、
・開業資金300が
・利益計画が達成した場合に
・利益計画とお金の動きの時間差(運転資金)がなければ
・1,000に増えますよ
という事を表します。
■運転資金についても計画する
利益計画を達成し、資金が300から1,000に増加すれば万々歳ではありますが、
・利益計画が現金取引では無い場合の「時間のズレ」によるお金の増減
についても考えなければなりません。
目標利益800がイコール資金の増加にならない、ということです。
考え方ついては前回の「時間差によって生まれるズレ」をご参照ください。
固定資金余裕1,000にこの運転資金増減▲1,000(③)を足すと0になります。
この0が期末現金残高見込額となるのです。
元手300でスタートした資金が、この利益計画・資金計画では0になる見込みということが
ここまでで分かりました。
※運転資金の説明補足
運転資金増減は何に対しての資金の増減かと言うと、
固定資金の増加要因にある「2、当期税引前利益(利益計画の目標利益)」に
対するものになります。
【利益計画】
売上高 12,000・・・だけれども月商1ヶ月分の1,000は未回収(上記2)
売上原価 ▲7,200・・・だけれども1ヶ月分の仕入代金600は未払い(上記1)
・・・これ以外に600の在庫を買っている(上記3)
販管費 ▲4,000
目標利益 800
【実際の資金の増減】
目標利益 800
上記1 +600
上記2 ▲1,000
上記3 ▲600
▲200
という訳で、会計のルールをベースにした利益計画で800の利益が実現できたとしたも、
・売上代金回収、仕入代金支払いについてはそれぞれ1か月サイトとする。
・在庫については仕入れの1か月分とする。
このような取引条件の決め事や在庫状況(在庫保有の方針や不良在庫)などによっては
資金的にマイナスになることも有り得るということがわかると思います。
一回作った後が大事
さて、これで一回利益計画を元にした資金計画がいったん出来ました。
ここで計算された期末現金残高見込みに一喜一憂する必要はありません。
ここからが本当の計画です。
・利益計画をもう一度見直してみる。
・取引条件について再考する。
・在庫を圧縮できないか考える。
・開業資金をもう少し増やすことを考える。
・金融機関等からの借入も検討してみる。
・利益計画が実現できなかった場合のことも考える。
などこの設例だけでも考えることはいくらでもあります。
これらの事は利益計画、資金計画を作ればこそ考え始めることが出来ます。
是非作ってみてください!