有名なことわざに、
「入るを量りて出るを為す」
というものがあります。
これは、
「収入がどれくらいあるかをきちんと計算して、それに見合った支出を考えなければならない」
という意味です。
お給料をもらっている方が家計を考えるにはピッタリではありますが、
起業された経営者にとってはピンとこないことわざかもしれません。
「出るは分かるが、入るが量れず」
と勝手にリメイクしてしまいそうです。
さて、今回は「お金の管理」です。
よくお金の管理というと「会計」の話になることも多いのですが、
ここでは会計についてはお話ししません。
会計は「お金」を単位として企業の活動を捉える手段ではありますが、
ここではもっと直接的なお金の管理についてお話ししてみたいと思います。
そもそも何故お金を管理するのか
・資金ショートを未然に防ぐため
・必要な未来への投資を検討するため
当たり前すぎることではありますが、この目的を分かっていれば、
起業してからのお金の管理に対して苦手意識は消えていくことでしょう。
今回は、起業する時に不安を抱える「資金ショート」を防ぐための管理を見ていきます。
何を管理するのか
①「いつ」
②「いくら入金いくら出金」
③「どんな内容で」
という3つの要素を管理していくことになります。
とくに重要なのは①「いつ」という要素です。
これを簡単な例でご説明します。
今日は7月30日。手持ち資金は100万円。
販売用の商品50万円を現金で仕入れました。
その商品を60万円で販売し、代金は現金で受け取りました。
7月31日、社員に給料60万円を支払いました。
これを表にすると、下記の通りです。
これが簡単ではありますが「資金繰り表」と呼ばれるものです。
上の例の通りにお金の入出金があったとすると、
7月30日、31日とも現金残高はマイナスではありませんので資金ショートはありません。
さて、商品の販売代金60万円を8月1日に受け取る約束にしたら
お金の動きはどうなるでしょうか。
同じビジネスをしたにも関わらず、
7月31日の時点で現金残高がマイナスになってしまいます。
同じ売上代金の回収でも、にこにこ現金払いもあれば
1か月後に入金、2か月後に入金…と取引条件によりお金が入るタイミングがバラバラです。
支払いに関しても同様です。
そのため「今回はは50万円の商品を60万円で売って10万円儲けたな」だけではなく、
その入金と出金が「いつ」行われるかも管理しなくてはなりません。
未来の資金繰り予測を作っておくことで
すべての資金ショートが防げるわけではありませんが、
「ある日突然資金がショートした」「明日資金が急に足りなくなることが分かった」
ということは防ぐことができます。
次に③「どんな内容」について見ていきます。
資金繰り表をあらかじめ作成していたので
7月上旬の時点で図2の通りの資金繰りになることがわかりました。
そこで、7月31日の資金ショートを防ぐために、
金融機関から7月30日付けで200万円を借り、
8月1日よりひと月に10万円ずつ返済することにしました。
※注:説明のための取引なのでちょっと現実的ではありません。
内容に「銀行から借入」「借入返済」が加わり、無事に資金ショートも防げました。
これはこれでよいですが、お金の管理という点で考えると、下記図4のようにするとどうでしょうか。
純粋な営業活動によるお金の入出金と、
財務活動によるお金の入出金に分けて収支を管理しました。
こうすると、会社のお金の動きの実態を掴みやすくなり
・お金の増減が何によってもたらされるか
・何によって資金手当を行うか
について考えやすくなります。
今回は営業活動、財務活動と分けましたが
この他に付け加えるとしたら「投資活動」となりなります。
何も手を打てないまま資金ショート、とならないためにも
月別の資金繰り表は作成しましょう。
「入るを量りて出るを為す」とはなかなかいかないかもしれませんが、
少なくとも「こうなったら」という前提のもとの将来の資金の状態を知ることは出来ます。
どうも苦手だな…という方も作れば意外と簡単です。
ぜひトライしてください!